2024年度 認定講習会第2回 報告

第30期KIRG認定講習会 第2回講習会を終えて

鳥谷俊平(鳥谷歯科医院)

1日目
・澤瀬隆先生「インプラントの局所検査と治療計画」

インプラント治療を行うにあたり、必要な診察と検査について講義していただきました。
全身状態と局所状態に加えて、なぜその欠損に至ったのか原因の推測まで行うことの重要性を学べました。Eichnerの分類や宮地の咬合三角といった学生時代に習った知識の重要性を再認識することができ、今後の治療計画を立てる際に活かしていきたいと思います。
骨質という言葉の奥深さと重要性も認識でき、自分なりに骨質も意識して処置にあたっていきたいと思います。
インプラント治療の成功基準として患者と歯科医師両方が満足するということを意識するために、OHIP-14も治療の評価として取り入れていかなければと考えさせられました。

・松下恭之先生「生体力学的観点からみるインプラント補綴のガイドライン」

永続するインプラント補綴のために力の影響から、骨・補綴装置を守り、インプラント周囲炎への罹患を回避することの難しさを感じた講義でした。インプラントの径や長さ、補綴装置の形態による骨内応力等を分析結果や実際に先生の症例で生じたトラブルを見せていただき、インプラントの選択や埋入位置の選択、補綴装置の決定、印象採得の方法など考えることの重要性を学ぶことができました。
可能な限りミスフィットを生じさせないことが我々歯科医師のできることであり、その確認の手段も学ぶことができたのでさっそく臨床に活かしていきたいと思います。

・原俊浩先生「インプラント治療に直結した解剖学」

インプラント治療は攻撃的治療であるため患者の期待度が高い、この言葉を肝に銘じておかなければと感じました。オトガイ孔一つとっても患者ごとの多様性があり、神経の走行やその副枝、上顎洞の自然孔の開大などCTでの確認に漏れが出ないように気をつけていきたいと思います。またCTでは確認できない軟組織内の血管や神経についても位置や走行の知識を深めていくことの重要性を感じました。
インプラント治療に直結する解剖の講義であったため、聞けば聞くほど不安になる点もありました。ですが、我々が不安になっていては患者の期待に応えられないと感じ、いつまでも精進していきたいと思わせていただいた時間でした。

2日目
・井上富雄先生「インプラントの生理学」

哺乳類のもつ感覚受容器の仕組みとその複雑さを学ぶことができました。咀嚼によりエネルギーの摂取効率が上がるため、その遂行のために正確な顎運動の「制御」が必要とのことで、仕組みが複雑になっていることに納得しました。歯根膜はないもののインプラントは咀嚼能力の改善に大きく貢献でき、現在の日本社会の抱える問題である超高齢化社会の解決とはならないまでも、高齢者のフレイルの対策になることを患者にも伝えていきたいと感じました。
大脳皮質による代償機能の関与や咀嚼による脳血流量の増大など、学生時代苦手としていた生理学に興味をもつことができた講義でもありました。

・森永大作先生「術後フォローアップ・診査項目」

インプラントの長期安定を図るための術後フォローアップは術前の診断・治療計画に大きく影響されることを学ぶことができました。術前の骨幅や骨質、周囲の天然歯との距離、インプラント間距離などを診査したうえでリスクマネジメントを行うことで、リスクの回避や低減はもちろんのこと、術後のメインテナンス時のリスクの予測にもつながり、患者だけでなく歯科医師や歯科衛生士にとっても小さなトラブルのうちに早期対応することが可能になり良いことであると感じました。
全身状態の確認も行い、場合によっては断ることの大切さも知ることができました。

・井上孝先生「インプラントの病理・病態学」

人間は一筆書きの上皮で覆われているということは全く意識したことがなく、まさに目からうろこでした。そしてインプラントは非自己であるため、本来は生体に排除されるものであるということも衝撃的でした。そんな非自己が粘膜(上皮)を貫通して開放創を作っているのであれば、天然歯よりも感染を起こし易いのは当然であると痛感させられました。
また高齢者や女性は代謝の変化が避けられず、このこともインプラントを長期機能させるための立派なリスクであることを忘れずに治療計画の立案を行う必要があると感じました。
病理学的観点から見るインプラント治療というものがどれだけリスクをはらんでいるかを少なからず理解することができたので、今後の臨床における新たな視点としていきたいと思います。

講師の先生方、非常に勉強になる講義をありがとうございました。また、同期の先生方とも親睦を深めることができ有意義な2日間になりました。
以上第30期KIRG認定講習会第2回の報告になります。重ねてお礼申し上げます。


九州インプラント研究会 第30期 第2回認定講習会 感想文
堀尾世界(医療法人ティースファクトリー古賀歯科)

澤瀬隆先生

インプラント治療における検査と治療計画についての講演でした。特に審美領域での見るべきポイントについて学ぶことが出来てよかったです。また、インプラント・アバットメントの接合についても臨床操作のポイントも交えて講演して頂き、現在主流であるICCタイプの利点・欠点等学ぶことができました。インプラントの種類を検討する際に注意して見ていこうと思います。

松下恭之先生

インプラント補綴について生体力学的観点からの講演でした。インプラント体を選択する際に考えるポイントや上部構造を作成するにあったっての力との関連について研究データを参照しながら学ぶことができました。また、印象操作での注意点やミスフィットに関しての精度検証法について詳細を学ぶことが出来ました。実際にエラーが生じた際に振り返れるようにしていきたいと思います。

原俊浩先生

インプラント治療に必要な解剖についての講演でした。実際に臨床の場で起きたトラブルについても講演して頂き、インプラント治療に対する不安を感じました。患者様にとっては身近な存在になってきた治療である分、事故を引き起してはいけない治療なため、解剖の知識や事故が生じた際の対処法をしっかりと学んだ上でインプラント治療に向き合っていかなければならないなと改めて感じました。

井上富雄先生

インプラントの咀嚼についての講演をしていただきました。歯の圧受容には歯根膜・筋紡錘が関与しており、歯根膜の失われたインプラントでは圧の抑制に作用することが出来ないため、オーバーロードに注意しなければならない点と咬合調整には客観的な評価が重要となると感じました。また、口腔機能低下症に関連した栄養摂取についての内容もあり、口腔内についてだけでなく、口腔から全身にも着目していかなければならないと感じました。

森永大作先生

術後のフォローアップについての講演でした。インプラント埋入処置には術式の手技だけでなく術前の診断も含めて長期安定性に関与するため、診断という部分がとても重要だと再確認できました。また、インプラント周囲粘膜炎に対しての維持療法および支持療法についての内容もありました。インプラント治療を行う上でインプラント周囲炎は必ずいつか向き合う必要があると思うので、さらに深く学んでいきたいと思います。

井上孝先生

インプラントに関連する病理学についての講演でした。インプラント治療の成功率の高さから忘れてしまっていたが、インプラントは異物という事を再認識しました。どんなに生体安定性が高くても、異物(非自己)であるためそこに感染が生じてしまうと排除されてしまうため、感染させないための取り組みが非常に重要だと感じました。また、インプラント周囲骨のリモデリングによって、感染していないインプラントでもフレアアウトするということを学びました。


2024年度 九州インプラント研究会 第2回認定講習会を終えて
多田剛之(千鳥橘病院附属たちばな診療所歯科)

2024年5月18日(土)5月19日(日)熊本市国際交流会館にて第2回認定講習会が行われました。第30期という記念すべき節目に受講させて頂きまして大変光栄に思っています。研究会を運営して頂いている講師の先生方、スタッフの方々、そして同じ志をもった受講生の先生方と最高の環境で学べている事に感謝の気持ちでいっぱいです。 講師の先生方が『我々にまかせて頂ければ大丈夫です』と仰って頂いて、これ程心強い言葉は有りませんでした。九州インプラント研究会を選ばせて頂いた判断が正しかったと確信しました。経験豊富な先生方の知識、技術、治療計画等たくさん吸収させて頂き、この言葉を私も深く広く習得し、一人でも多くの患者様にお伝え出来る様、日々研鑽を積んでいく所存です。

(1日目)
澤瀬 隆先生
インプラントの局所検査と治療計画について講義して頂きました。何故歯を失ったのかなど考察し、1口腔単位の計画が必要であり、咬合状態、歯周、唾液量などの口腔内審査の診察、検査法等教えて頂きました。またインプラントアバットメント接合様式についてエクスターナルバットジョイント、インターナルバットジョイント等について説明があり今後の補綴計画に役だつと考えられました。

松下恭之先生から生体力学的観点から見るインプラント補綴のガイドラインを講義して頂きました。Over loadの影響、ブリッジを支持する要素、over loadを生み出す要素、臨床に見るインプラント補綴の問題点について説明して頂きました。先生の経験した症例も見せて頂き大変理解がし易く、分かりやすいイメージがつきやすかったです。

原 俊浩先生の御講演
インプラント治療に直結した解剖学について講義して頂きました。
インプラント手術では神経、血管の走行に注意して手術を行う必要があり、損傷を避ける為には解剖を熟知しておく必要がある為、詳しく説明して大変わかりやすかったです。

(2日目)
井上富雄先生
インプラントの生理学について講義して頂きました。日本とアメリカにおいて食文化が違い、食べ物について形容する言葉はアメリカよりも日本の方が約5倍多いとの事です。それだけ日本人は食について繊細に考えている事がわかりました。また咬合力の低下が栄養不足に繋がる為、要介護状態の高齢者を減らす為に咬合力の低下を防ぎ、口腔機能の向上が必要であると言う事。歯が欠損した場合は義歯よりもインプラントの方が咬合力が強い事が実験により示され、何故インプラントが必要か患者様にevidenceを説明出来る様になりました。

森永大作先生
術後フォローアップ・診査項目について講義して頂きました。インプラント治療は術前の計画も大事ですが、術前術中の治療がうまく行われたとしても術後のメンテナンスをきちんと行わなければその予後に差が生じます。また、インプラント後、炎症所見を認めた場合、炎症の程度によってその対応が異なる為、術後の炎症の評価のやり方、そしてその評価に対した治療方法を教えて頂きました。

井上 孝先生
インプラントの病理・病態学について講義して頂きました。
インプラント周囲組織に生じた扁平上皮癌の病理組織像等見せて頂き、普段見る事が出来ない内容を学ぶ事が出来ました。創傷の治癒の原則についても説明があり抜歯即時埋入の際の病理学的立場からみた理想的な時期や、待機埋入における理想的な時期等について説明がありました。創傷の治癒を妨げる因子についても図等を用いて分かり易く説明して頂き、実際患者様の生体に生じている事を学術的に理解する事が出来、広い知識を身に付ける事が出来ました。

今後、実習や手術見学も予定されていると伺っており、大変楽しみにしています。御迷惑をお掛けしますが、最後まで宜しくお願い致します。

澤瀬隆先生講義

全国から集まった受講生、いつも定刻前に始まります

松下恭之先生講義

原俊浩先生講義

井上富雄先生講義

森永大作先生講義

井上孝先生講義

鋭い質問攻め

鋭い質問攻め

鋭い質問攻め

ポストテストに取り組む受講生

KIRG正会員(加来敏男先生)からのサジェスチョン

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