第28期 九州インプラント研究会認定講習会第2回 感想
湯浅 主庸 辻歯科口腔外科総合クリニック(福岡)
2022年5月21日、22日に熊本市国際交流会館にて受講いたしました。
初めに、この2日間の私は体調が芳しくない中、先生方やスタッフの皆様から気遣っていただきながら受講いたしました。本当にありがとうございました。そして受講生の皆様、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。
1日目は阿部成善先生、澤瀬隆先生、永井省二先生が現地にて講義されました。
阿部成善先生は、理想のインフォームドコンセント像、患者さんの様々な不安に対する対応の仕方、インプラント治療における歯周病と糖尿病の関連について、を軸に講義していただきました。患者さんは我々が説明する半分しか覚えていないということを前提に、ここは覚えてもらいたいというときは紙に書いて説明をするなどのアクションを起こすこと、トラブルを避けるためには患者さんと雑談ができるようになること、と話されました。インプラント治療を行うときだけでなく、日ごろの診療に一番直結する講義でした。
澤瀬隆先生は、インプラント治療の理念をメインに講義していただきました。患者は何を望んでいるのか(機能性、審美性、心理的満足など)、術者は何ができるのか(医療技術、医療倫理、設備など)を、深く理解しました。個人的には、骨質の内容がとても印象深く、9月の学会がとても気になっております。
永井省二先生は、インプラント治療における咬合の基礎知識についてです。咬合分析に基づいた治療では、顔貌だけではなく姿勢まで改善していくことを知り、私の想像以上に患者の健康に関わると理解を深めることができました。私は臨床に携わってから今日まで、咬合が一番大事であるということを教わってきました。そしてどの分野よりも考え込んできましたが、永井先生の講義で自信がついた面もあり、逆に驚いた面もありました。
2日目は井上富雄先生、森永大作先生が現地にて講義され、井上孝先生はWebにて講義していただきました。
井上富雄先生は、インプラントの生理学をメインで講義していただきました。内容は「咀嚼」。咀嚼の意義から、歯根膜、筋紡錘の咀嚼に対する役割、インプラントと咀嚼の関係についてまで、詳しく説明していただきました。咀嚼についての理解が深まり、なぜ従来の補綴方法と比べ、インプラント補綴の方がいいのかを生理学の観点から十分理解しましたので、この講義を活かしこれからの患者さんの説明にどんどん発信していこうと思いました。
森永大作先生は、インプラントの術後フォローアップについてでした。私はインプラント埋入後のケアが一番大事だと思っていましたが、講義を受けて考え方がかわりました。術前のリスクの同定、分析、評価及び、術中の診査(骨幅、骨質、インプラント間距離、天然歯との距離)が、術後のメインテナンスを行う上で重要になってくることを深く理解しました。
井上孝先生は、インプラントと周囲炎の病態学についてでした。皮膚、粘膜の欠損は開放創で細菌の侵入口であり、インプラントは粘膜を貫通している開放創ということを十分に理解し、治療、メインテナンスに取り組むべきである、ということを話されました。天然歯はもとより、インプラントは非自己で開放創なのでケアは特に重要でると再確認できました。又、天然歯と失活歯の肉芽組織の掻爬の在り方を聞いたとき、臨床でもしばしば考えさせられるものでありましたが、長年の悩みが解決できました。
今回もこれではまだまだ書き足らないくらい内容が濃い講義内容で、あっという間に時間が過ぎてしまった2日間となりました。
今後もしっかり学んで、多くの患者様のQOLの維持、向上に繋げられるよう精進していきます。
最後までどうかよろしくお願いいたします。
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2022年度 九州インプラント研究会第2回講習会 受講感想
第28期 川口悟史
一日目午前中は、阿部成善先生の講義でした。
インプラント治療は高額で、手術の侵襲も高く、患者さんの期待も高い治療法なので、医療者‐患者間で認識の違いがあるとトラブルになりやすいと考えます。
患者さんとのトラブルを回避するために、どんな説明をするべきか実体験を元に講義がありました。
また、安全にインプラント治療を行うにあたり、アシスタントやコデンタルスタッフとの情報・意識の共有が大切であることを学べました。実際に使用している同意書を頂けたので、ぜひ活用していきます。
午後は澤瀬隆先生の検査と治療計画についての講義でした。
特に興味深かった話は、スクリュー固定式上部構造の連結に関して注意すべき点があることでした。
インターナルジョイントはインプラント体との隙間が少ない利点があるが、締結時にトルクを掛けると、アバットメントが沈み込む現象が起きるということを初めて知りました。
インプラントを機能させ、長期に安定させるためには、もっと知識を深くしないといけないと感じました。
永井省二先生からは、咬合の考え方について講義がありました。
顎位がずれているcaseで、どう変位しているかの咬合の診かたは目から鱗でした。
実際の顎位の決定とインプラントの咬合についての研究をわかりやすく解説して頂きました。
インプラント治療に限らずすべての治療で、常に歯列全体を診れるように心がけます。
二日目午前中は井上富雄先生から生理学についてご教授頂きました。
人間の口腔はすぐれた感覚を持っていること、咀嚼という運動が様々な機能によって成り立っていることを深く実感しました。脳との関係や全身との関係から、口腔の機能を維持することの重要性を学ばせて頂きました。
森永大作先生にはインプラントを長期安定するために、術前・術後で診査しなければいけないポイントを示してくれました。特にインプラント周囲炎を起こさないために、インプラントの診査方法と対応について学ぶことが出来ました。術後インプラントのメインテナンスシステムをこれから作る上で、非常に参考になりました。
午後は井上孝先生の病理学の講義でした。
「肉芽は除去すべきか」という大変興味深い話から講義はスタートしました。日常臨床で目の前で起こっていることが、病理学的に何が起こっているのか、わかりやすいたとえ話を交えながら解説して頂けました。
炎症とは何なのか、インプラントに感染が起きやすい理由など、明日からの患者さんへの説明に使える知識が整理できました。
第2回講習会を終えて、膨大な量の知識を頂きました。しっかり復習して明日からの臨床に活かしていきます。
永井省二先生:咬合の講義
井上富雄先生:インプラントと生理学の講義
受講風景
森永大作先生:術後フォローアップの講義
井上孝先生:病理学の講義
受講生からの質問
阿部成善先生:医療面接・クリニカルパス・全身疾患の影響