2024年度 認定講習会第8回 報告

第30期KIRG認定講習会 第8回講習会を終えて

鳥谷俊平(鳥谷歯科医院)

1日目
・矢島安朝先生「インプラント治療のトラブルシューティング」

インプラント治療に伴うリスクや合併症を、実際の症例を提示していただきながら講義をしていただきました。実際のケースや対処法を見せていただくことで大変勉強になりました。特に舌下動脈を損傷した場合の圧迫手順は、経験したくないですが、万が一必要となったときに即座に実施できるようにしておきたいです。
また、緊急時のマニュアルは歯科医師だけでなく、スタッフにも徹底していきたいと思います。

・森永太先生「高齢化とインプラント」

実際の症例とその経過や追跡調査の結果を踏まえながら、現在の高齢化社会におけるインプラント治療の展望についてお話していただけました。
オーラルフレイルの早期発見・治療はまさしく私たち歯科医師が行うべきことですので、OF-5を活用してフレイルの予防に取り組んでいきたいと思います。
また、森永先生の講義を受けて自分が歯科医師になった意味を改めて考えていきたいと思いました。

・杉山正美先生「医療訴訟から学んだこと」

先生が実際に経験された医療訴訟のお話を聞くことができ、カルテの大事さを改めて実感しました。巻き込まれないように気を付けていたとしても誰にでも可能性があるということを肝に銘じて日々の診療に取り組んでいきたいと思います。
処置内容に非がなかったとしてもしっかり対応しなければならないということは大いに学びになりました。
また、患者さんとの信頼関係を築きながら治療に臨めるように、身の回りの環境を整えることも大事だと感じました。

2日目
・小笠原一行先生「インプラントと矯正治療」

矯正治療とインプラント治療を絡めた治療の方針についてと歯周組織との関連について講義していただきました。
基本的には矯正治療後にインプラント治療を行うが、治療期間の短縮を目指す場合にインプラント治療を先に行うこともあるとのことで、なるほどと思うと同時に綿密な治療計画が必要だと感じました。予測実現性の高いゴールを目指すために術前にワックスアップを行うことは有効ということも学びになりました。
矯正治療後5年で歯肉退縮が生じている症例は47%と約半数におよぶことに驚愕するとともに、根面被覆術というプランを提案できるようになることも大事だと思いました。
実戦でできる診断力と臨床力を身に着けていきたいです。

・加来敏男先生「インプラント治療におけるデジタルの活用」

様々な口腔内スキャナーの特徴、またそれぞれのスキャナーで撮影した3Dモデルを見せていただきました。口腔内スキャナーの精度は向上しているもののケースによってはまだ難しいものもあると感じました。
スキャナーとCT、診断ソフトを活用することで精度の高い治療を行うこともできるが、すべてを信用し過ぎず、自分で考え気付ける力も必要なことを再認識できました。

・佐藤公則先生「口腔インプラント治療に伴う上顎洞合併症への対応」

上顎洞粘膜とその機能が正常であることがどれだけ大事であるかを学ぶことができました。
たとえ上顎洞粘膜が肥厚していても線毛上皮の機能は正常であり、自然口が開いていれば上顎洞の機能も維持されるということを知らなかったので、このことを学べたことは今後の臨床に大きく役立つと思います。
また、上顎洞粘膜を損傷した場合、治癒後は線毛上皮でなくなるためソケットリフトやサイナスリフトでの同粘膜の剥離には細心の注意が必要だと感じました。
先生の話は医師目線であると同時に、患者さん目線でもあり、歯科医師目線でもあり、大変心強く感じました。

 

4月に始まった本講習会もあっという間に8か月が過ぎ、今回で最終講義となりました。
本講習会では基礎的なことから臨床的なことまで幅広く教えていただけただけでなく、今後歯科医師として過ごしていくうえで、大切な心構えも教えていただけました。
講習会は修了しましたが、今からがスタートであると思っています。今後とも講師の先生方および同期の先生方にはお世話になりますので、どうかよろしくお願いいたします。
以上第30期KIRG認定講習会第8回の報告になります。重ねてお礼申し上げます。


第30期KIRG認定講習会 第8回 感想文
古内 聖弓  (古内歯科クリニック・宮城県)

1日目
【インプラント治療のトラブルシューティング-インプラント関連医療事故への対応と信頼回復への方略】
【これからの専門医のあり方-カリキュラム再編成を通して-】
担当:矢島安朝先生
先月までの講義でも、インプラント治療における偶発症について学んできましたが、これまでの内容を復習しつつ、医療事故等法律の観点も含めて、社会からみたインプラント治療の問題点について、改めて理解することができました。また、専門医制度については、今後標榜できるようになることを見据え、患者に選ばれる歯科医師となれるよう、専門医の取得を前向きに考えようと思いました。

【インプラントと高齢化・口腔機能低下】
担当:森永太先生
インプラント治療は歯の欠損に対して、口腔機能や審美性の回復を目的としており、そのような背景から対象となる患者は高齢者であることが多いです。高齢になると、口腔内だけでなく、全身状態の悪化も考えられるため、今後の体調変化や生活に配慮した歯科治療を行う必要があるということを改めて感じました。また、インプラントの埋入だけでなく、その後のメインテナンスを継続できるような環境づくりにも努める必要があると思いました。
医療の過疎化が昨今のニュースで話題となっているように、必要な地域に必要な医療を届けるのが難しくなっていると思います。私は必要な人に必要な歯科治療が届けられるよう、より患者に寄り添った医療を考えていきたいと思いました。

【医療訴訟から学んだこと】
担当:杉山正美先生
先生のお話から、どんな治療でも医療訴訟のきっかけとなる可能性を否定できないと思いました。例え年数が経っていようと、どんな事例でも裁判の対象となってしまうということに、恐ろしさを感じました。実際の事例から、リアルな実情を把握することができ、とても勉強になりました。
先生のお話から、日頃の診療でどんなに手間がかかってもカルテの記録は怠らないこと、侵襲的な治療を行う前には患者とのラポール形成を必ず行うこと、など省いてはいけない重要な点を学ぶことができました。今後の診療にさっそく生かしていきたいと思います。

2日目
【Dental implant-Orthodonticを含む、包括的治療を行う上での、連携の大切さ及び固定源から考えるインプラント埋入のタイミングについて】
担当:小笠原一行先生
インプラント治療と歯科矯正治療という、交わりそうで難しい部分を、論文を交えながら解説していただき、大変勉強になりました。特に、歯槽骨の位置関係や幅径が大事であるということは、インプラントと歯科矯正に共通する注意点であると思いました。また、歯牙の種類によって、歯肉退縮のなりやすさが変化したり、歯牙の動きによって歯肉退縮を防いだりすることができるということを初めて知り、勉強不足を痛感しました。
マウスピース矯正については、その手軽さから最近では一般的となりつつありますが、今回の講義で学んだ注意点に気を付けて、今後利用を検討したいと思いました。

【口腔インプラント治療に伴う上顎洞合併症の病態と治療】
担当:佐藤公則先生
インプラント治療だけでなく、口腔領域の炎症と密接な関連がある上顎洞について、耳鼻科医の観点からの講義を聞くことができ、とても勉強になりました。大学病院の口腔外科では、歯性上顎洞炎の原因歯の抜歯依頼が来ることがありますが、歯を抜歯しただけでは上顎洞炎の消炎にはつながらないことや自然孔が開いているかどうかが要であることを知り、口腔内だけではなく解剖学的に精査や治療を行う必要があると学びました。また、上顎洞根治術ではなく、上顎洞の機能を温存することができる、鼻腔アプローチの内視鏡下副鼻腔手術という方法があることなどを知ることができ、改めて耳鼻科を始めとした医科との連携の重要性を感じました。

【第八回認定講習会を終えて】
これまでの講義内容を踏まえつつ、医療訴訟や歯科矯正、耳鼻科あっという間に最終講義となってしまい、寂しいような、終えられて安心したような気持ちです。しかし、歯科医師人生においてこれをゴールとせず、新たなスタートとして今後も自己研鑽に励んでいきたいと考えております。
八か月間、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

矢島安朝先生 トラブルシューティング+専門医のあり方講義

森永太先生 歯科医師の生き方も教えてもらいました

杉山正美先生 最高裁まで頑張ったお話し

いよいよフェアウェルパーティ

美味しいお酒が飲めました フェアウェルパーティ

フェアウェルパーティ 加来敏男先生の乾杯

真剣な受講態度

相変わらず質問多し

小笠原一行先生 矯正におけるインプラントの考え方 素晴らしかった!

佐藤公則先生 貴重な文献を紹介していただきました

修了式 阿部成善先生の最後のお教え

受講生代表挨拶 多田剛之先生ありがとう!

修了式 式辞 伊東隆利会長

修了式に受講生18名勢揃い

関連記事